川之江・新宮地区の談合状況と比較
4川之江・新宮地区の談合状況と比較
川之江地区は四国中央市の縮図です。なぜなら「談合疑惑物件」と「競争物件」が分類しやすいからです。
下のグラフは川之江地区6年間308件の土木分野と建築分野の落札率です。
これを見れば、「談合と思われる高価格落札の建築工事」と「競争機能が正常に働いている土木工事」が2つの塊になっていることがわかります。
[ 図1 ]川之江地区の土木と建築の落札率(6年間308件)
さらに分析すると、川之江地区は入札業者を3グループに分けられます。
- 「落札率」の高い(利益が多い)「Aグループ」
- 「Aグループ」以外の建築2社「Bグループ」
- 「落札率」の高くない(利益の多くない)「Cグループ」
「落札率」の高い(利益が多い)「Aグループ6社」
下の表は「Aグループ6社」の JV(注1)を除く単独での落札状況を利益順にしたものです。
Aグループの内2社は売上・利益とも市の工事の比率が高いですね。
[ 表1 ]利益を独占する「Aグループ」6社 (JVを除く・利益順)
会社名 | 年商 | 落札 回数 |
落札金額 | 上乗せ利益 | 建築 格付 |
土木 格付 |
データ照会 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
㈱藤田組 | 2億 | 20 | 546,956,401 | 44,462,948 | A | A | 詳細 |
㈱久保組 | 27億 | 25 | 896,070,066 | 25,659,814 | A | A | 詳細 |
㈲石村住建 | 1億 | 13 | 438,043,033 | 23,301,050 | A | D | 詳細 |
新電設備工業㈱ | 5億 | 11 | 216,302,900 | 16,176,694 | B | F | 詳細 |
尾藤建設㈱ | 24億 | 19 | 399,195,787 | 15,490,212 | A | A | 詳細 |
西川建設㈱ | 3億 | 1 | 74,240,000 | 4,240,000 | A | – | 詳細 |
計 | 89 | 2,572,808,187 | 131,272,718 |
6社はJV(注1)落札により、この2倍以上の利益を独占しています。
(注1)JVとは、大規模な建設工事事業において複数の企業などが協力して事業を請け負う形態のこと、及びそのような組織のことです。
ジョイントベンチャー(joint venture)の略語です。
「強い2社」が桁違いの体力を持っていますね。
もし、「強い2社」のベクトルが一致すれば、談合が成立しやすくなります。下のグラフは、偶然でしょうか?まるで1つの会社のようですね。
最低制限価格との差に注目して下さい。実績目当ての落札と利益目当ての落札を使い分けています。(PDFも参照)
[ 図3 ]尾藤建設(株)と(株)久保組の入札推移(27年度)
JV工事においては、「Aグループ」6社の利益シェアが圧倒的です。
下の表は川之江・新宮地区、6年間8件のJV工事、落札の状況です。談合情報を物ともせず、平均落札率99.23%という圧倒的な高落札率で、6社が順番に落札しているのが分かります。
この6社で、川之江・新宮地区の利益(JVと単独)の90%を独占しました。[ 円グラフ参照 ]
[ 図4 ]川之江・新宮地区の6年間8件のJV工事、落札の状況
「Aグループ」以外の建築「Bグループ」
下の表はJVに参加しなかった「Bグループ」2社の落札状況と市の格付です。
[ 表2 ]Bグループ2社の落札状況と市の格付(利益順)
会社名 | 年商 | 落札 回数 |
落札金額 | 上乗せ利益 | 建築 格付 |
土木 格付 |
データ照会 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
㈱遠藤建設 | 0.7億 | 20 | 292,790,200 | 23,211,581 | B | E | 詳細 |
金生建設㈱ | 2億 | 5 | 61,546,200 | 10,709,700 | B | – | 詳細 |
計 | 25 | 350,706,400 | 33,921,281 |
落札率の高くない12社「Cグループ」
下の表は落札率の高くない「Cグループ」12社の落札の状況です。
やはり「上乗せ利益」額(最低制限価格を超える額)が他の2グループに比べて圧倒的に少ないですね。 でもこれが本来の「競争がある」場合の姿なのです。
舗装工事では多くの工事を高い落札率で獲得していた業者も、土木工事ではそれができていません。
15回最低制限価格ギリギリで応札して、7回落札・8回失注です。落札した7回も「上乗せ利益」(最低制限価格を超える額)の合計が1万円にもなりません。
[ 図6 ]Cグループ12社の落札の状況
3グループとJVの比較
川之江・新宮地区の6年間の3グループの比較をグラフ化すると、談合疑惑の様子がよりハッキリ見えます。(図1・図9も参照)
Aグループ6社は、落札率90%以上の高額物件を独占しています。
Bグループ2社は、利益率の高い物件を落札しました。
Cグループ12社は残りの175件を最低制限価格すれすれの厳しい落札をしました。四国中央市内で、本来あるべき「競争」を実現しているのは、土居地区の一部の業者を除けば、この12社のみです。
[ 図7 ]川之江・新宮地区の6年間・4グループの比較
Aグループは、必要と感じる時には極端な安値で落札しています。
[ 図8 ]川之江地区の不可解な落札(落札率82%以下)
下のグラフは川之江地区の20業者の6年間の落札額と上乗せ利益をグラフ化しています。
単独入札の場合、「高落札率グループ」のA・Bグループと「低落札率グループ」のCグループでは全く違います。
「高落札率グループ」のA・Bグループは落札回数に対して「上乗せ利益」の多い会社です。落札金額の約8%が「上乗せ利益」です。(強い2社は特別事情、PDF参照)
三島・土居地区は、完全にA・Bグループタイプになります。「低落札率グループ」のCグループは落札回数に対して「上乗せ利益」が少ない会社です。
各企業の落札回数に注目してください。Cグループはいくら落札回数を増やしても「上乗せ利益」は上がりません。
赤線(上乗せ利益・右側目盛)にも特に注目してください。どこが利益を上げたのか一目でわかります。JVは「上乗せ利益」が特別大きいこともわかります。
[ 図9 ]川之江地区の会社別落札金額と利益額
各グループの「利益」偏在表
[ 図10 ]川之江地区の「利益」偏在表
グラフにすると、歪みがさらにハッキリ見えてきます。
全体の32%の落札件数で「上乗せ利益」のシェア90%を得ているAグループ6社。
全体の60%の落札件数で「上乗せ利益」のシェアわずか2%しか得ていないCグループ12社。
これが正常な状態ですか?こんなこと許せますか?
[ 図11 ]川之江地区の件数シェア・利益シェア